私道の通行掘削承諾の扱いが変わりました/トウリハウジング通信 2025年11月

私道の通行掘削承諾

不動産取引の際、住宅地で建物の敷地が私道に接しているケースが少なくありません。私道はほとんどが個人や法人が所有しているため通行や掘削を行うには所有者の承諾が必要でした。しかし、近年増加する「所有者不明土地」の影響で、私道の所有者が見つからないケースも多く、ライフラインの整備や建築確認申請に支障をきたす事例が後を絶ちませんでした。このような課題に対応すべく、2023年4月に施行された「民法等の一部を改正する法律」により、私道の通行・掘削に関するルールが大きく見直されました。これは私たち不動産業者にとって、今まで悩まされた私道の通行・掘削承諾が法律上、大きく変わったことになります。今回は、改正前後の違いと実務への影響について記載しました。

・改正前:所有者不明でも承諾が必要だった私道掘削 

改正前の民法では、他人の土地に設備を設置することに関して明文化されていなかったので、相隣関係に関する条文を類推して適用するしかありませんでした。そのため、私道に水道管やガス管などのライフラインを引き込む時には、所有者全員の承諾を得る必要がありました。承諾は後々のため書面で取得することが不動産取引では一般的です。しかし、私道所有者の1人でも所在不明だった場合、通行掘削承諾を取ることが事実上不可能になるので、建築工事ができなかったり、不動産売買契約が解約になったりと支障が生じていました。

・改正後:承諾がなくても掘削可能に。設備設置権・使用権が明文化 

2023年4月の民法改正では、以下の点が新たに明文化されました。

  1. 設備設置権の創設
    自己の土地にライフラインを引き込むために、他人の土地(私道)に設備を設置する権利が認められました。
  2. 設備使用権の創設
    設置した設備を継続的に使用する権利も明文化されました。
  3. 承諾不要の原則
    一定の要件を満たせば、私道所有者の承諾がなくても掘削・設置が可能となりました。

この改正により、所在不明の所有者がいても、ライフライン整備が円滑に進められるようになったのです。

  • 建築確認申請や不動産取引においては、改正民法の内容を踏まえた説明が必要です。
  • 所有者が不明な場合でも、市町村長による財産管理制度の申立てなど、行政的な手続きも活用可能です。

【通知と償金が義務化】

承諾不要とはいっても、工事を行う際には以下の配慮が求められます。

  • 事前通知
    工事の内容や方法について、私道所有者に対して事前に通知する義務があります。
  • 償金の支払い
    掘削によって損害が生じた場合には、償金を支払う必要があります。
  • 場所・方法の限定
    設備の設置は必要最小限の範囲に限られ、私道の利用方法や周辺環境に配慮することが求められます。

これらのルールにより、私道所有者とのトラブルを未然に防ぎつつ、公共性の高いライフライン整備を実現するバランスが図られています。

この改正は、不動産取引にも大きな影響を与えます。今までは、私道の通行・掘削承諾書が取得できないと住宅ローンの審査が通らないなどのケースもありましたが、今後は法的に掘削が可能であることを示すことで、金融機関の理解を得やすくなると期待されます。また、自治体やライフライン事業者にとっても、所有者不明土地への対応が容易になることで、インフラ整備の遅延が解消される可能性があります。

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編集後記

弊社は、北区内で私道に面した戸建を所有しています。その私道に埋設されている下水管で不具合がありました。北区では、一定の条件を満たせば私道内の下水管工事に対して補助金が出るため、私道所有者全員で補助金を申請することになりました。

しかし、工事を行うには、弊社と隣接する土地の2軒の前の私道所有者から「通行掘削承諾書」を取得する必要がありました。そこで、登記簿に記載されている住所を訪ねたところ、該当する場所には、その方の住居はなく、建売住宅が複数建っていました。

そこで、私道所有者が不明であることを証明する資料を揃えて北区役所で調査した結果、私道所有者は引越し先で、亡くなっていることが判明しました。

この状況を補助金担当の窓口に「民法改正によって通知を出すだけで私道を掘削しても良いのではないか」と連絡したところ、北区としては法律が改正になったことは理解しているものの、トラブル防止の観点から、私道所有者が亡くなった場合でもその相続人など関係者から「通行掘削承諾書」を取得するよう求めているとのことでした。

現在ではこの承諾書は法的に必須ではありませんが、自治体によってはトラブル回避のために取得を求めるケースが残っています。

結果として、弊社の土地の前には承諾をもらえた土地に一部かかっていたので、掘削できましたが、隣の土地の前はすべて所在不明所有者の土地だったので、掘削することができませんでした。

 

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